見えないからといって、

そこに、

なにもないわけではない。

Introduction

豊かさにあふれる生き方を。

本作は、甲賀市が希求する「新しい豊かさ」をテーマに制作された。

古琵琶湖層の大地に育まれた歴史が、 茶の香のように日常へ溶け込むこの街で、ふと生まれる「余白」を自分らしい色彩で満たしていく。

そんな「甲賀スタイル」とも言える生き方を、この物語は 映し出している。

歴史の静かな呼吸と、いまを生きる人々の願いが共鳴し、新たな豊かさの物語が今、ここに結実した。

Story

土地に立ち、うみの鼓動にふれる。

からだの芯がふるえ、脈動をはじめる。

かつて、うみ(湖)が通り過ぎた記憶を深く抱くこの街では、地中に埋もれた木々が時を超えて息を吹き返すように、様々な命の音が紡がれている。

乗馬クラブで馬を世話し、どこか所在なさを抱えて生きる小海(おうみ)。

内なる旋律(ライトモチーフ)に導かれ、絵を描き始める表現者。そして花屋のささやきの中に、目に見えぬ絆を編む人々。

別々に流れる物語は、祭りとともに土地の記憶と呼応し、やがて一つに重なり始める。

掘り起こされた化石が新たな調べを奏でるように、うみの残響に身を委ねたとき、小海は交差する記憶の中に、 自らの輪郭を見出していく。

Staff & Cast

街を冠した物語。

本作に出演している人々は、ほとんどが演技経験のない地元の人々である。 彼らが発する言葉や佇まいは、甲賀の地で営まれてきたリアリティそのものであり、 虚構を超えた力強さで観る者に迫る。

水口囃子の響きや山車を引く手、日々の花の世話、そして馬を撫でる仕草。 その一つひとつが、300万年前の地層から続くこの街の鼓動と重なっていく。

スクリーンに映し出されるのは、いまを生きる人々と遠い記憶が共鳴し、新たな「物語」として息吹きを上げる瞬間である。

また、主人公の小海には甲賀市在住者の中からオーディションで選出された12 歳の澤田桃百(もも)、表現者役に世界的な評価を受けるアーティスト・鵜飼 結一朗(やまなみ工房)が出演している。

監督を務めるのは、知的や身体に障害のある人たちと数々の表現活動を行ってきた映像作家の野田亮。アートワークを、やまなみ工房。

物語の原案を作家のいしいしんじ、 声の出演を女優の安藤サクラ、音楽を大友良英、振付をダンスアーティストのなかむらくるみがそれぞれ担当しており、個性的な制作陣となっている。